「明日の記憶」(荻原浩)

広告代理店で部長をつとめる佐伯は、最近50歳を目前に物忘れの度合いが激しくなったのが気になり、仕事での疲れ過ぎからくるうつ病を疑って、妻に言われてイヤイヤながらも精神科を受診する。しかし、そこで下された診断は「若年性アルツハイマー」という、思いもよらないものだった。数ヵ月後に一人娘の結婚・出産も控えており、なんとしてでも病気の悪化を抑えたい佐伯だったが、日に日に病状は進み、仕事にも支障をきたし始める…。
映画にもなった有名作品です。いつもコミカルな作風が印象に強い荻原さんですが、これは題材のせいもあり、とても重かったです。自分の父をアルツハイマーで亡くしている佐伯が、そのときの記憶と自分を重ね合わせて苦悩するのは本当に読んでいても辛かったです。
でもさすがに、自分は佐伯とは年代が違いすぎるので、「怖いなあ」以上にはあまり入り込めなかったかも…。どちらかというと、佐伯の娘・梨恵の妊婦の描写がなんだか不自然だなー、なんてのは気になってしまったんですけどね…(^_^;)

明日の記憶

明日の記憶

りんご's BEST 5 of 2008

2008年に読んだ本(2008年発行ではありません)のベスト5、順不同です。

赤朽葉家の伝説」(桜庭一樹
http://d.hatena.ne.jp/ringo-lib/20080115

「名前探しの放課後」(辻村深月
http://d.hatena.ne.jp/ringo-lib/20080426

ジーン・ワルツ」(海堂尊
http://d.hatena.ne.jp/ringo-lib/20080921

阪急電車」(有川浩
http://d.hatena.ne.jp/ringo-lib/20080805

「ゴールデン・スランバー」(伊坂幸太郎
http://d.hatena.ne.jp/ringo-lib/20080727

次点「スロウハイツの神様」(辻村深月
http://d.hatena.ne.jp/ringo-lib/20080630
これも大好きで迷ったんですが、一応1作家1作品ということで見送りました。

「マチルダは小さな大天才」(ロアルド・ダール)

4歳のマチルダは、ディケンズの小説も読みこなせる大天才。字が読めるようになったのは、3歳になる前。しかし、子どもなんて邪魔者と思っている両親は、マチルダの才能にまったく気づいていないどころか、彼女のいうことをまともに聞こうともしない。マチルダは理不尽なことがあると、その頭脳を使って両親にささやかな「仕返し」をするのだった。
ある日、5歳になったマチルダは皆と同じように学校に通い始める。担任のミス・ハニーはマチルダの才能に初日に気づき、なんとかそれを伸ばしたいと思うのだが、この学校は生徒たちを力ずくで押さえつける女校長・ミス・トランチブルに牛耳られているのだった…。
映画にもなった「チョコレート工場の秘密」を書いた、ダールの作品です。これも「マチルダ」というタイトルで映画化されているみたいですね。さすがダール、毒や皮肉たっぷりでとても面白かったです!マチルダはもちろんその頭脳でもって、この校長もやりこめてしまうわけなんですが、大人の目で見ると「ありえなーい!」ではありますけども、痛快でした。マチルダが、頭がとっても良くても決してイヤな感じの子じゃなくて可愛いんですよね。そこも魅力な作品です。長年ダールとコンビを組んでいたクェンティン・ブレイクの挿絵も、とっても合っていていい感じでした。

マチルダは小さな大天才 (ロアルド・ダールコレクション 16)

マチルダは小さな大天才 (ロアルド・ダールコレクション 16)

  • 作者: ロアルドダール,クェンティンブレイク,Roald Dahl,Quentin Blake,宮下嶺夫
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 2005/10/01
  • メディア: 単行本
  • 購入: 4人 クリック: 38回
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「リセット」(垣谷美雨)

デパートで開催されていた、故郷の町の物産展で偶然再会した知子・薫・晴美。同じ高校でもそれほど仲が良かったわけではないが、30年ぶりの懐かしさでそのまま再会を祝して飲みに行った。3人ともに現在の生活に不満を抱き、人生やり直せたら…という話をしていたところ、その飲みにいった店の店員が不思議な装置を操作し、彼女らは気がついたら意識は48歳のまま、高3のときの世界に戻っていた…。
大好きなタイムトリップものなので、見過ごせませんでしたー。こういう作品は、ついつい手にとってしまいます(笑)。3人はそれぞれ前の人生でできなくて後悔していた道に進み人生やり直すんですが、だからといって成功を収められるわけでもなく…。前の人生で結婚していた知子のダンナは、今回は薫と結婚するんですが(知子はダンナにうんざりしていたので、「どうぞどうぞ、アドバイスもするよ」という感じで)、それもなかなか上手くいかず…。
物語の最後に3人がどんな結論を出したかはネタバレになるので書きませんが、「まあ、そんなところよね」という感じだったのは、途中が結構おもしろかっただけにちょっと拍子抜けというか残念だったかな、と思いました。

リセット

リセット

「初恋素描帖」(豊島ミホ)

ある中学校の2年生の1クラスを舞台に、それぞれの生徒たちを主人公にした(全員ではありませんが)短編集です。雑誌「ダ・ヴィンチ」で一部連載していたのを楽しみに読んでました!書き下ろし分を加えての単行本化です♪
やっぱり豊島さんの学校モノ好きですねー。学校っていいなあ!でも、「懐かしくなった」「共感した」というよりは、生徒たち一人一人が毎日一生懸命生きてて(この作品の場合は、主に「恋してて」、かな)、でも普段はそれをほとんど表に出さずに机を並べてる…という事実に改めて驚かされました。学校って実は濃い空間だなあ(笑)。

初恋素描帖 (ダ・ヴィンチブックス)

初恋素描帖 (ダ・ヴィンチブックス)

「ザ・ギバー 記憶を伝える者」(ロイス・ローリー)

11歳の少年・ジョーナスをはじめ同級生たちは、「12歳の儀式」を前に落ち着かない日々を過ごしていた。この儀式によって、すべての11歳の子どもたちは将来の仕事をそれぞれの適性によって決められるのだ。
そして儀式の当日、皆が次々に職業を任命されていく中、一番最後にジョーナスが任命されたのは、久しぶりの任命である「記憶を受けつぐ者」であった。その存在もほとんど知らなかった彼は、前任者である「記憶を伝える者」から少しずつ訓練を受け始めるが、それは同時にこのゆがんだ世界の仕組みに気づくことでもあった…。
だいぶ前にニューベリー賞(アメリカの有名な児童文学賞)を受賞した作品、先輩に薦められていたので読んでみました。最初は舞台について「ちょっと変わった世界」くらいにしか思わないのですが、読み進めていくうちに実は恐ろしい超管理社会だと気づかされます。あさのあつこさんの「No.6」の世界よりもすごいです。その中で必死にもがくジョーナスの姿にとても考えさせられました…。物語の終わり方も、こういう感じ(ネタバレ禁止のため書けませんが…)でほっとさせられました。

ザ・ギバー―記憶を伝える者 (ユースセレクション)

ザ・ギバー―記憶を伝える者 (ユースセレクション)

「叱り叱られ」(山口隆)

サンボマスターボーカルの山口さんが、偉大なる先輩ミュージシャンたちにナマイキな口をききまくってる(?)対談集です。私はサンボマスターって、ドラマ版「電車男」の「世界はそれを愛と呼ぶんだぜー!」って叫んでたやつしか知らないのですけど…。とにかく対談相手の皆様が超豪華で(山下達郎大瀧詠一岡林信康ムッシュかまやつ佐野元春奥田民生(敬称略))、特に大瀧詠一さんがめっちゃ読んでみたかったので今回手にとってみました。
もう、音楽の話はかなりマニアックなので正直ついていけなかったかも(笑)。聴いていた世代的には、やっぱり奥田民生さんの回が一番わかりやすくて楽しめました。でもどの回も、山口さん口はナマイキでも音楽への愛や対談相手への尊敬があふれていて、ちょっとサンボマスター聴いてみたくなったかなー♪

叱り叱られ

叱り叱られ