「ぼくのメジャースプーン」(辻村深月)

小学四年生の「ぼく」は、時々母方の血縁に出る不思議な力をもっている。それは「○○(条件)しろ。そうしないと××(罰)になる」と心から相手に言うことによって相手にどちらかを必ず選ばせる「条件提示ゲーム」の能力で、母から決して使わないようにと禁じられていた。
ある日、「ぼく」の学校で飼っていたうさぎが惨殺され、第一発見者となった大切な幼なじみのふみちゃんはショックで心と声を失ってしまった。犯人は世間の注目を浴びるための愉快犯であった裕福な医大生で、彼が刑務所に入ることはないと知った「ぼく」は能力を使って復讐しようと決意する。それを止めたい母は、他の唯一の能力保持者である親類の秋山教授と「ぼく」を会わせ、能力について教わるように計らうのだが…。
かなり好きな辻村さんの作品、今回もスリリングであっという間に読んでしまいました。「罪」に対しての「罰」とはどういうことか?フェアではない能力を使って「罰」を与えることに対する自分の覚悟とは?ということが、秋山と「ぼく」のやり取りの中でじっくり語られ、なかなか読み応えがありました。ラスト近くの「ぼく」の選択には驚かされて、その想いに切なくなりましたが、希望のある終わり方でほっとしました。

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)

ぼくのメジャースプーン (講談社ノベルス)